時空超える古物への愛
世界中で多くの人が傷つき、そして広範かつ深く社会や文化が破壊された 20 世紀の世界大戦。
そのような空前の悲惨を経た同世紀半ば、世界は再びその惨禍が起こらないよう、平和協調を模索します。しかし、一方では依然として各地で戦乱による破壊が続いていました。
九間堂亭主の生まれ故郷・中国大陸でも、動乱ともいえる権力闘争が全土を巻き込み展開され始めます。いわゆる「文化大革命(1966-76)」です。そして、そのさなかに、実に膨大な数の文化財が破壊されました。もちろん、古物も封建文化の一部と目されていたため、壊され燃やされ、それにまつわる「心」共々、散々に踏み躙られてしまいました。
この光景に胸を痛めた人々は、何とか古物を救出したい、先人から受け継いだ智慧や文化を残したい、との一心で、集団狂気渦巻く危険のなか、密かに奮闘します。敬愛する、九間堂亭主の叔父も、そうした古物救済に奔走した一人でした。
やがて、長く吹き荒れた破壊の嵐は去り、一先ずは安寧の時代が訪れました。九間堂亭主はそのような時代に生まれ育ちますが、叔父や心ある人々が当時胸中で発した「古物を護ってくれ」との叫びを、いつしか天啓と受け止めます。特に幼少期から強い影響を受けた叔父からは、古物の表面的価値だけではなく、歴史的重みや運命的出会い、蒐集に込められた情熱等も教えられ、文物に対する姿勢や志を托されることとなりました。
あまたの戦乱や迫害から、先人達が命がけで伝えてくれた古物。それらに染み込んだ様々な想いや、時空を超えて届けられる美的感性を、共感できる方々と分かち合い、受け継いでいきたい――。そのような想いが、今に続く九間堂の信条をかたちづくりました。
その他の敵との戦い
古物やそれを愛する者に忍び寄る敵は、戦乱や迫害だけではありません。次々と現れる贋物もまた敵と言えるでしょう。
それは買主に金銭的損害を与えるだけではなく、市場や学術研究を混乱させ、それに関わる人々の心も傷つけます。また、不誠実な業界の慣習なども、悪しき敵といえます。
九間堂は、そのような贋作や不誠実の横行を憂い、心を痛めております。そして、同好の人々の信用や心を傷つける如何なる「欺き」に反対します。
幸い、九間堂はこれまで数多くの素晴らしい本物に接し、一方で同じく無数の偽物と対峙することで確かな鑑定力を身につけました。この豊かな経験と知識、そして道義心を基に、古物にまつわる不正とも対峙してまいりたいと思います。
モノとの対話への共感
モノは生きています。また、モノは人を解します。そして、モノの良さが解る人の手にあることを喜んでくれます――。
九間堂亭主は常々そう考えておりますが、それは、亭主自身が古物や工芸の愛好家であり、日々それを実感しているからです。
九間堂は、そのようにモノと対話できる方々と共に歩んで行きたい、と思っております。こうした志に御賛同いただける皆様からのご連絡と、そこから始まる新たなご縁・交流を楽しみにお待ちしております。
現代に復元された伝統的な中国の飾り物(中国天津市内)